理事長所信

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一般社団法人川崎青年会議所
2020年度 理事長所信

勢津 智佳

 0、はじめに
 単純なことかもしれませんが、笑顔を見るだけで私は幸せな気持ちになることができます。どんな逆境にあっても、どんなに辛くても、私自身も笑顔でいられたらと思っています。世の中は楽しいことばかりではありません。しかし私に関わる全ての人々にはいつも笑顔で幸せであって欲しいと願っています。
 いつの時代においても未来は若者に託されています。何故なら社会の変革は常に青年が持つ情熱と行動によってのみ実現されてきたからです。変革は苦しく、道のりは果てしないものです。しかしそれだけの価値があります。一人では苦しくても、同じ志を持つ仲間と一緒になれば、未来はきっと変えることができます。自らの可能性を信じて行動を起こし、共に明るい豊かな社会を作り出す。それは私たち青年の使命なのです。

 

 1、新しい時代の始まり
 令和という時代が沢山の笑顔に迎えられて始まりました。振り返ると平成の約30年間で川崎市の人口は実に37万人も増え、人口で全国政令指定都市中6番目の大きな都市へと発展をしました。平均年齢は最も若い42.8歳であり、超高齢化社会となっていない唯一の政令指定都市であります。国の復興を支えた基盤産業を中心とした産業都市からITをはじめとする先端技術系の企業や研究機関の集積が進み、日本の成長戦略を担う都市へと変化をしました。更に羽田空港の再拡張・国際化と川崎臨海部の一体的な整備などにより川崎の国際性が大きく向上しました。スポーツや文化でも明るい話題が多く、川崎の魅力が高まる大きな機会を迎えています。
 しかし2030年には人口減少が始まり、近い将来には超高齢化社会を迎えると予測されています。加えて若者の収入減少によって子供を産み育てる力は弱まり、消費税増税・社会保険料の負担による消費の落ち込み、市民の社会参画意識の低下、理不尽に子どもが巻き込まれる事件を耳にする機会が相次ぎ、社会的な不安は増しているように感じられます。さらに、近年の異常気象や発生の可能性が高いと言われている東海地震などの自然災害はいつ我々のまちに襲いかかってきてもおかしくありません。この川崎においてもそう遠くない未来に困難が訪れる可能性は十分あるのです。我々は青年として現実に向き合い、川崎の未来のために行動を起こさなければならないのです。

 

 2、自らが変革をして多くの人と運動を起こす
 人口152万人を超える川崎において、川崎青年会議所が単独で運動を起こしたとしても、2030年を前に川崎が希望を持つことができる明るい豊かなまちになることは難しいでしょう。川崎には多種多様な人材が集まっています。多様性を尊重して、全ての人が一致団結をして取り組み、またそれを続けていくことができれば、やがて川崎の未来は素敵なものへとなるはずです。
 多様性が許容されないことで起こる問題は、過去の慣習や風習を理由に活動が制限されてしまうため、個人の能力が発揮されず、組織の考え方が画一化し、社会が発展する可能性が失われることです。固定観念を捨て、過去の成功体験に囚われずに、性別、年齢、国籍、身体的条件を問わず、誰一人取り残すことのない、全ての人が自分らしく活躍できる、そんな社会を築く必要があります。
 全ての人が活躍する社会をつくるために川崎青年会議所は率先して行動をしなければなりません。我々は行政・企業・市民をつなぎ、関係を強め、協調をして運動を起こすことで世の中にインパクトを与え、市民に能動的な行動を促すのです。そのために我々は地域のリーダーとなり、何事にも挑戦を続け、時代に必要な能力を与える組織へと変化しなければなりません。

 

 3、社会の改善、経済の発展、組織を進化させる戦略
 全ての人が自分らしく活躍できる社会を達成するために、川崎青年会議所は社会を改善し、経済を活性化する取り組みを行い、未来の地域社会を担うリーダーを生み出す組織へと進化をします。
 社会の改善にはSDGsを推進し、行政、企業、ステークホルダー間のパートナーシップを強め、17つの目標について我々自身の目標を定めます。特に人口減少と高齢化の状況を緩和するために、子供が多く生まれ、子育てがしやすい理想的な社会の実現に向けて、地域の特性を活かした持続可能な社会基盤形成がなされるように議論を進めます。
 経済の活性化には、地域の特有の資源活用に注目をします。地域のアイデンティティーを明確に表現するとともに多種多様な需要に応えることができるよう計画を立てます。そして国際的に活躍の出来る人材を育て、コトとモノとヒトの全ての面で国際競争力を向上させます。
 組織の進化には、メンバー数、メンバーの能力、内部統制に注目をします。より良い変化を青年にもたらすために多くの発展と成長の機会を提供し、若き能動的市民の主導的なネットワークとなるべく、矛盾の無い行動を起こすことができる組織へと進化をさせる必要があります。

 

 4、社会を改善する
 大正期に市外や国外から多くの人が流入をしてきた川崎市。多様性とともに発展をしてきたこのまちが、今後も発展を続けていくにはより多くの人が地域の直面する課題を認識し、どのように解決していくべきかを考える必要があります。既に世界中で認知度が上がっているSDGsで社会課題は明確に示され、多くの人びとと共有することができるようになりました。2019年7月川崎市は「SDGs未来都市」に選定されました。SDGs推進に関する高いポテンシャルと達成に向けた提案が評価されたことで、川崎市は「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向けて大きな一歩を踏み出しました。川崎青年会議所はSDGsの推進をより加速させるために全ての政策の展開にあたってSDGsに示されている17つの目標から地域の特性に合わせた目標を定め、社会を良くするための事業の運営を行います。その中で行政、企業、民間を繋ぐ役割を担い、SDGsの目標に対して企業や民間ができることを進めていく運動を作ります。そして全国のSDGsの推進に向けて活動する団体と情報を共有し、社会全ての分野を強く繋ぐことでより大きな課題を解決する原動力となります。
 2018年日本の出生数は過去最少を更新しました。長期的に人口減少が続く中で国の成長を期待するにはとても厳しい状況にあります。川崎市の合計特殊出生率は1.40と他の地域と比べ若干高い数字ではありますが、人口維持に必要な2.07とは大きな隔たりがあります。40歳以上の女性人口は55%を超え、2030年に人口減少が予測されている川崎市においても少子化対策は急務なのです。子育てが負担であるからという理由で出産を諦めているのであれば、その負担を軽減しなければなりません。女性をサポートする仕組みの他にも、多様性を活かした固定観念に囚われない革命的な発想で、社会全体で子供を育てるという意識の変化を起こすのです。子供を産み育てることのできる年代の我々が行動を起こすことで社会に対して強いメッセージを発信することができるのです。川崎青年会議所は子供を持つことが個人の幸せとなる多子社会を実現するために議論を進めます。

 

 5、国際の機会を活用して経済を充実させる
 2020年は日本が世界から最も注目される年になります。4年に1度のスポーツを通じた平和の祭典東京オリンピック・パラリンピックが開催され、205の国や地域から人々が日本に集まります。我々の青年会議所の組織においてもJCI世界会議が横浜の地で開催され、113の国と地域からJCの理念を共有する恒久的な世界平和を願う仲間が集まります。グローバル化による地域の垣根が低くなった時代に、世界の人々に日本の持続可能な社会に対する取り組みを発信するには最高の機会になります。オリンピック招致決定後から始まったインフラや競技施設の整備と、訪日外国人旅行者数の増加で、景気は一時的に上向きとなっています。この好機を活かして川崎にある多くの中小企業は、2030年に予測されている人口減少による地域経済の縮小を前に、企業が存続するための体制を整えることができます。国内市場向けに作られた製品は必ずしも海外の需要が無いわけではありません。他社には真似のできない自社ならではの強みを生かした価値を、多種多様な需要に合わせて提供するのです。その一方で日本独特の文化を持つサービスに対しては海外の強い需要があります。地域のアイデンディティーを損なわずに、多様性に合わせて正しく発信をすることで経済発展の可能性を広げます。

 

 6、組織を進化させる
 青年に発展と成長の機会を与え、より良い変化をもたらす力を与えることが青年会議所の使命であり、その使命を達成するには青年会議所のメンバーを増やすことが最も効率的です。川崎青年会議所における近年の女性会員の比率は10%未満、会員の平均在籍年数が約4年、社会での女性の活躍の広がりや若者の活躍の期待が高まる中で、女性や若者に発展と成長の機会を与えることができていないことは明らかに問題です。さらにメンバー構成に偏りのある組織のままでは社会の変化についていくことができずに衰退の一途を辿ることになります。多様性のある社会を実現する地域の発展を担う人材を輩出する組織に進化するために、青年会議所の在り方を見直し、限られた環境の中で成長の停滞している女性と若者にも発展と成長の場を提供する必要があります。
 戦後、川崎青年会議所は日本経済再建のために地域経済の復興と世界平和への貢献を行う趣意を持って設立がされました。川崎青年会議所の起こした運動や事業は地域にインパクトを与え、そのいくつかは川崎青年会議所の手を離れた後も行政や市民によって今日も継続されています。時代によって運動方法が異なることがあっても、先達から引き継がれた青年会議所のビジョンは変わることがありません。これからも地域にインパクトを与え、さらに多様性のある社会を実現するために、青年会議所組織の存在意義を改めて認識し、時代に即した柔軟な組織運営を実施します。仮に時代の変化によってビジョンに対して矛盾する行動をしていると感じているのであれば、前向きに整理することも必要です。多様性のある青年達が青年会議所の使命を共有し、同じ価値観を持つことができれば、より効果的な運動を起こす組織へと進化することができるのです。
 青年会議所の最大の特徴は世界各地に存在する青年会議所とのネットワークです。ある時には地域を飛び出して、他の地域でしか得ることのできない体験を通して発展と成長をすることができます。更に国境を越えた場所で同じ価値観を持って運動するメンバーとの出会いは青年会議所独特なもので、必ずや感動を覚えるでしょう。その体験を自分の地域に持ち帰り、多様性を活かしていくことで、運動は更に効果を増し、社会をより良いものに変えて行くことができるのです。

 

 7、信頼される組織作り
 情報が氾濫する社会で本質的な情報を効率的に伝えることができれば、青年会議所運動に共感をする団体や能動的市民との繋がりを容易に持つことができます。川崎青年会議所のあらゆる運動の発信を通じて、社会活動を促進できる広報体制を整えます。
 一般社団法人である川崎青年会議所には法人として社会責任を果たす義務があります。川崎青年会議所が行う事業についてはコンプライアンスの順守が求められます。外部からの信用を確固たるものするために、メンバー一人ひとりがコンプライアンスの意識を向上し、適切な組織運営を確立してガバナンスを強化します。私たちの活動資金はメンバー一人ひとりから出た会費と私たちの運動に賛同する方々からの想いから成り立っています。この資金を透明性のある会計処理を通して有効に活用し、効率的で効果のある運動を行います。
 青年会議所の特徴でもある議案と会議は、運動をより効果的に実施ために欠かすことのできない仕組みです。綿密な議案構築と資料作成を徹底し、会議においてメンバー同士の意見を効果的に集約できる組織を築いていきます。

 

 8、終わりに
 青年会議所は私に、いつの時代においても青年の存在自体が社会課題の解決策であることを教えてくれました。多種多様な分野から集まった者同士でも、青年会議所では同じ志を持っていれば、お互い助け合える心と心で結ばれた仲間になれるのです。

 

仲間を信じよう。そして明るい未来を描こう。

 

固い信頼で結ばれた友情を持ってすればどんなに複雑で難解な課題であっても、私たち青年は苦しくとも乗り越えることができるのです。我々青年が能力を高め、知識を増やし、お互いを理解し、十分な情報に基づいた行動を起こすことが、社会への貢献なのです。挑戦の先にある明るい未来を見据え、地域に持続的なインパクトを起こすことで、社会はきっと良い方向に動き出し、私たちが幸せになれる社会は実現されるのです。